事業再生法律お悩み相談 実務に効く! ツールとしての法律(事業再生及びそれに関連する法律のトリセツ)

事業再生に関連する法律お悩み相談、裁判例などを使って具体的かつわかりやすくご説明します(法律に詳しい方には易しすぎるかもしれません)。

せっかく担保を設定したのに、倒産時に主張できない③!?

自動車に対する担保権に関連して、もう一つよく問題になるのが、前々回で申し上げた対抗要件です。

前々回では「登記」を例に出しましたが、「登記」は登記簿謄本を見れば有るか無いかわかります。また、前回ご説明をした「登録」も、車検証を見れば記載があります。このように、書面で確認できる対抗要件は、対抗要件の有無が問題となることはあまりありません。一方で、一般的な動産(簡単に言えば、物です)については、「引渡し」が対抗要件になるため書面で確認できません。

この点が問題となった裁判例として名古屋地裁H27.2.17があります。軽自動車に対して所有権留保を設定していた事案で、担保権設定契約の中に占有改定の条項がなかったのですが、それでも対抗要件を具備した所有権留保といえるかが問題となりました。実は軽自動車も登録制度がないため、占有が対抗要件となります。

そして、占有改定とは、占有は維持したまま、当事者の意思だけで引渡しする方法です。具体的には買主が占有したまま、当事者の意思で信販会社に引渡しをしました(これにより、買主は信販会社のために占有を継続することになります。これを他主占有といいます)。ところが担保設定契約書には占有改定をするという定めがなかったことから、買主の破産管財人Xが、信販会社Yに対して、対抗要件が認められないと主張して提訴しました(厳密には、信販会社が弁済充当したことが偏頗行為否認の対象になるとして破産管財人が提訴した事案です)。

しかしながら、名古屋地裁H27.2.17は、契約書の条項などから、占有改定による引き渡しが認められるとして、管財人Xの主張を認めませんでした。

「引渡し」という、ややあいまいな概念だと、このように争いになることがあります。契約書でカバーできる部分ももちろんありますが、限界があることも否定できません。

 

こういうところが、法律の難しいところですが、面白いところです!