事業再生法律お悩み相談 実務に効く! ツールとしての法律(事業再生及びそれに関連する法律のトリセツ)

事業再生に関連する法律お悩み相談、裁判例などを使って具体的かつわかりやすくご説明します(法律に詳しい方には易しすぎるかもしれません)。

せっかく担保を設定したのに、倒産時に主張できない②!?

前回の続きです。

では、どうしたらいいのか。

端的には、信販会社が弁済をした際に、登録名義を信販会社にするということが考えられます。しかし、登録免許税がかかりますし、手間もかかります。

そこで、前回ご紹介した判例が出た後に、多くの信販会社は、約款の変更をしました。具体的には、信販会社が保証債務を履行して売買代金を支払った場合、信販会社は法定代位して留保所有権を行使できるという約款を入れたところ、最高裁判例H29.1.27は、法定代位であれば、販売会社の名義のままでも、信販会社の所有権留保は行使できると判断をしたのです。

何故、このように結論が異なることになったのでしょうか。

実は、前回ご紹介した最高裁判例H22.6.4では、信販会社が弁済した場合、残代金に加えて手数料債権を担保権として行使できると約款で定めれていました。一方で、最高裁判例H29.1.27は、この「手数料債権」を担保権の対象とはしませんでした。法定代位とは、もともとの債権のみが移転するという考え方なので、「手数料債権」が新たに加わると、それは新しい担保設定であり、そうであればきちんと登録名義を信販会社にしましょうとしたのが、最高裁判例H22.6.4ということができます。一方で、もともとの販売会社の担保権が、そのまま代金債権のみを担保するのみの形で信販会社に移転した場合には、もともとの販売会社の登録でも担保権を認めましょうとしたのが最高裁判例H29.1.27ということになります。

なんとなく、どちらでもあまり変わらないような感じも致しますが、担保権が認められるのとそうでないのでは回収額が全く違うこともありますので、 どのような法律構成で担保権を設定するかは重要です。

このあたりが法律も難しさでもあり、面白さでもあります。少しでも、法律の面白さに触れて頂けたら幸いです。

 

 

せっかく担保を設定したのに、倒産時に主張できない①!?

せっかく担保を設定したのに、取引先が倒産した際に担保権を主張できないということがあります。倒産した時こそ、担保権の効力が認められるべきであるのですが、何故このようなことが起きてしまうのでしょうか。

それは、対抗要件を備えていない時におこります。

典型的には、抵当権設定契約があったとしても登記がない時です。なお、仮登記でも担保権を主張できるか否かは、主張できるという説と、できないという説で分かれています。

では、登記や登録などの対抗要件さえあれば、常に認めらるかというと、そういうことでもありません。

この点で、よく問題になるのが、自動車に対する所有権留保です。所有権留保というのは、典型的には、売買で、代金全額の支払いがなされるまで売主に所有権を留保することで、買主の支払債務を事実上担保するものです。自動車では、自動車を売るのは、販売会社(いわゆるディーラー)になるのですが、信販会社が連帯保証をして、事実上信販会社がローンをつけている形をとります。仮に買主が代金の支払いをしない場合は、信販会社が全額を販売会社に弁済し、信販会社が留保していた自動車に対する所有権を行使(実際には売却)して、回収することになります。

自動車の登録上の名義は販売会社になっている状態で、信販会社が弁済した後、買主が民事再生した場合、信販会社の名義で登録していない以上、信販会社は担保権を主張できないとした判例があります(最高裁判例H22.6.4)。

なんで?と思われますが(私も思いました)、簡単には、担保権者の名義となっていないため、担保権者はせっかく設定した担保が主張できないとされてしまったのです。

では、どうすればいいのか。次回に続きます。

私的整理において、何故商取引債権は保護される?

私的整理においても、債権はカットされます。

しかしながら、私的整理においてカットされる債権は一般的に金融債権(≒銀行の債権)に限られています。そもそも私的整理が行われていること自体、商取引債権者は知らされずに行われることも多く、普通の取引が継続されます。

何故、商取引債権が保護されるのでしょうか?

これは、商取引債権を保護することで、事業が棄損することを防ぐためです。そして事業の棄損を防ぐことで、商取引債権をも含んでカットされてしまうため事業が棄損することが多い法的整理に比べて、金融債権の回収も多くなることを目指しているのです。つまり、金融機関、商取引債権、そして債務者(というか事業)がウインーウインーウインの関係になるのが私的整理と位置づけられているのです

ところで、私的整理は、カットの対象となる全債権者の賛成が必要となります。したがって、全債権者の賛成が得られない場合や、法的整理に移行せざるを得ません。

その場合でも、早期に法的整理を成立させるため、法的整理においても商取引債権を保護する工夫がされています。例えば、近時、私的整理の一種類である事業再生ADRから簡易再生(民事再生の一種ですが、1か月程度で手続きを終わらせることができる方法)に移行した場合、迅速に手続きを終わらせることができるように、法的整理に移行した場合でも商取引債権を全額保護するのが妥当であるか否かを裁判所が早期に判断できるよう、私的整理段階で法律上の要件を満たすことをあらかじめ確認などの定めがおかれました(産業競争力強化法59条~65条)。

はじめまして

2019年1月2日

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ビジネス関係(企業法務やM&A)、事業再生、事業承継や相続の判例や法改正などをわかりやすく提供していく予定です。

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